コトの発端は、1枚しか在庫のなかった手ぬぐいにまとめて2枚のご注文をいただいたこと。
すぐに再入荷の手配をしてホッと一安心、のはずだったのに、届いたダンボールを開けると、そこには前回のものとはやや色味の異なる手ぬぐいが入っていました。
「どう見てもサイトの写真と色が違うじゃないの。困った!」。
一時は返品しようかとさえ思いましたが、手ぬぐい自体が不良品なわけではなく……。
悩んだ末、再入荷した手ぬぐいを撮影し、ご注文主のA様にお見せして、相談することにしました。これこれこういうわけで、サイトの写真とは少々違う色に染め上がってきましたが、いかがいたしましょうか? キャンセルなさいますか?――
(左がその写真です。右が従来のもの、左が新しく入荷したもの)
A様からのお返事にはこう書かれてありました。
「私としては、手作りや、手染めや、天然の物に2つと同じ物が存在しない、と思っていますので、多少の見た目は個性でイイと思うのです。
ですから、あえて、添付してくださったリンクは開いてみません、、、
こんな出会いがあるなんて、素敵じゃないですか〜 むしろ、大歓迎です。」
写真をあえて見ない?! むしろ大歓迎?!
予想もしなかった好意的な反応にびっくりしましたが、「ああ、こういう考え方もあったのだ」とあらためて気づかされました。
そもそも大量生産品の画一性にうんざりして、手仕事の品を扱い始めたはずなのに、お客様に“サイトの写真と同じ品”を届けなくてはと思うあまり、いつしか品物の個性までも厄介に思い始めていた自分がいました。
当店がネット通販であるかぎり、お客様にとっては、サイトの写真だけがご購入の手がかりとなるわけですから、そこに忠実であろうとするのは、当然の義務だと考えています。
しかし、「写真と違う」というただそれだけの理由で、品物を排除してしまったら、手作り品の魅力を否定することにもなりかねません。
A様からのメールにはこのようにも書かれていました。
「手作りの物にしか、存在しない個性、、、
大量生産では、この個性は商品としての価値を下げる様ですが、破損している訳でもなく、
商品として、なんの落ち度もないのに、不憫な気までしてしまったり」
私には手作り品の個性を慈しんだり、尊重する気持ちが欠けていたのではないか。
品物の個性を認めたうえで、お客様にはその都度対応をしていけばいいのだ。
A様のおかげで、我が身を振り返り、当店の原点をもう一度見つめ直すことが出来たように感じています。
この手ぬぐいは、こうしてお蔵入りを免れたのでした。
梨園染 菊ならべ http://wazakkasui.com/nuno/rz001-47.htm
(上記リンク先の写真は、新しく撮影し直したものです)