追悼:田中青磁さん

かねてより闘病中であった陶芸家の田中青磁さんがお亡くなりになられました。

60代前半、まだまだご活躍いただきたかったのに…と思うと無念でなりません。

「目で見た印象より手にとった時に軽く感じるものを」をモットーとし、終生磨かれたろくろの技は随一。

また、「安心して口にできるものを」と薪ストーブから出る灰を使って釉薬をご自身で調合されていました。化学的に合成された釉薬とは違い、毎回コンディションの違う天然灰の釉薬を使うことにはかなりのご苦労が伴っていたと聞いています。

当店で扱っているような暮らしの器だけでなく、油滴天目、禾目天目の研究・製作をライフワークとして取り組んでらっしゃいました。長年の研究の末に作られた天目茶碗を見せていただいたことがあります。

深い黒の色と油滴のようにはじける銀色の斑紋の美しさ。見事な作品でした。

田中さんはご自身を「陶工」とおっしゃっていたとおり、作家然としたところは全くありませんでした。

陶芸の道に打ち込まれていたそのお姿は、職人というよりも、求道者のように感じられました。本当に残念です。

当店では、田中さんが生前に作られた品が残っている限り、今後もお取り扱いを続けます。

皆様のご家庭で田中さんの器がご愛用いただけることを願ってやみません。

田中青磁さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。